はぐ手を結ぶ、解くそのときまで

造形専攻 美術研究領域

古屋 湖都美

生成りの糸と黄色の糸_01

糸|可変|2024年

展示風景

生成りの糸と黄色の糸_02-03

糸|可変|2024年

展示風景

生成りの糸と黄色の糸_04

作業用手袋の軍手は日常の中に潜む。道端に所在のない手袋が不意に現れる。
無作為であったり拾われたり左右が揃わずにいる。
持ち主は、例えば輸送トラックの運転手やこの街の建物を建てたりと都市を形成している人々かもしれない。
いくらでも替えの効く軍手は、都市生活の作り変わることを象徴しうる存在。脈略なくないように不意に現れて、我々に軍手は何かを形づくる人間の存在。
つまり、構造の尻尾を見せているのだと。

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はぐ手を結ぶ、解くそのときまで

インスタレーション /指導教員:末永 史尚

造形専攻 美術研究領域

古屋 湖都美

ZOKEI賞受賞作品について

古屋湖都美氏は今回、布を主なモチーフとして制作しました。布が使用されている既製品に手を加えたり、布そのものを作ったりと、生活の中の布の存在を見つめ直すことによって、自身の個人的なものを超えた感覚の表出を試みています。それは、機能性が生み出す美的な質、繰り返し行われる手作業が持つ温かみや、色彩や存在感、形が類似する美術作品の視覚的な蓄積など、さまざまな要素が絡みあってそこに降り立ってきているのだと思います。
この作品には、軽やかで美しいその造形的な質と同時に、日常を構成するデザインされた物の背後に潜む歴史的な要素に思いを馳せることができる装置としての新しい機能が与えられています。

(教授 末永 史尚)