投影される風景 手は暖かい
美術学科 絵画専攻領域
吉田 優菜
普遍的な風景に自分自身を定着させるための絵画制作。
変化する家庭環境や出身地である岡山県と東京の二拠点を往復する生活の中で何かを獲得している瞬間は常にある一方の時間や可能性を失っていると日々強く感じていた。
私の在処はどこにあるのか。
不安な心を治癒するために風景の中に自画像、あるいは誰かである人物像を絵の具で定着させる絵画制作が必要となった。
喪失感とは想いを馳せること
獲得感とは今この瞬間である。
投影される風景 手は暖かい
平面 /指導教員:末永 史尚
美術学科 絵画専攻領域
ZOKEI賞受賞作品について
住宅地を2人の人物が見下ろす風景と、緑の多い風景の中を2人が歩いている様子が対をなすように展示されている。吉田優菜は、出身地である岡山と、いま生活している関東、2つの場所の記憶を主題にして絵画作品を制作しました。人は常に土地や人間関係のバランスのなかで自己をつくりあげ保っています。生活場所の変化は自己のゆらぎを生みますが、彼女はこの感覚に敏感に反応し、絵画として留めようとしています。高く伸びた稲や鉢植えの植物に向ける視線などが、見たことがあるけれど忘れていた記憶を呼び覚ます一方で、これを個人の物語に収斂させず、むしろイメージを広げてくれているのだと思います。
(教授 末永 史尚)